福岡です。過去数回に渡りM&Aのプロセスについて説明させていただきましたが、今回で最後です!今回は交渉・契約フェーズの最終条件調整以降の話をさせていただきます。
【M&Aの一般的なプロセス】
最終条件調整とは
デューデリジェンス(適正評価手続き)で買い手による売り手の理解が深まったところで、最終条件調整を行います。初めにお伝えしておく点として、この交渉は売り手にとっては耐える場面です。売り手としては、基本合意書で合意した条件通りで最終契約できることがベストです。いかに基本合意より不利な条件にしないかが重要です!
デューデリジェンス後に最も調整・交渉が入るのははやり株価です。デューデリジェンスで今後のキャッシュアウトが起こる可能性が見つかった場合に価格調整の交渉が行われます。例えば、従業員の退職金支払規程はあるのに退職引当金が計上されていないなどが挙げられます。この場合、従業員の方が退職すると利益が大きく減少するのでその分株価を下げる、そのような交渉になることがあります。別の例としては、訴訟リスクがある事象が見つかった場合は、今後の損害賠償請求の可能性を加味し、株価引き下げの交渉となる場合があります。
上記では、株価を引き下げする前提で話をしましたが、最終契約書に補償条項として規定する場合もあります。例えば上段で記載した訴訟関連の場合、損害賠償請求となった場合は売り手が全額負担する、といった条項を入れることで買い手に納得してもらいます。実際に起こるか起きないかわからない事象が要因で株価引き下げになるよりは、補償条項で全額負担の方が売り手にとっては有利だと思います。 例を挙げればキリがないですが、ひとつひとつ最終条件を詰めていくことになります。より良い条件で着地できるように、また、M&A後に揉めることがないように、必ず納得するまで交渉することが重要です!
最終契約書の作成・締結
デューデリジェンス後に最終条件調整・交渉を行い、条件が確定した後に最終契約書を作成します。最終契約書作成まで様々な出来事があり、やっとここまできた!という感覚ですが、M&A後に最終的な成果物として残るのは最終契約書です。ですので、これまで交渉してきた内容が最終契約にしっかり落とし込まれているか確認することは非常に重要です!
決済・クロージング
最終契約書が完成し、その後調印を行いますが、最終契約書に調印をしたらM&Aが完了というわけではありません。最後に決済(株式の譲渡)を行い、めでたくM&Aが完了です。
最終契約書締結日と決済・クロージング日は異なる場合が多いです。その理由として、最終契約書に「株式譲渡の前提条件」が規定されている場合、その対応をする時間が必要となるからです。
株式譲渡の前提条件は少しわかりにくいかもしれないので、2つほど例を記載します。一つ目は売り手と取引先との契約にチェンジオブコントロール(Change of Control:COC)条項がある場合、その承諾を取りにいきます。COC条項とは、オーナー(株主)の変更が生じる場合、事前承諾(報告のみの場合もあります)が必要というものです。二つ目はM&Aに際し会社分割を実施する場合です。
上記どちらの場合も、最終契約書を締結しM&A実行が確実となる状態でなければ対応できない内容ですので、前提条件とするわけです。
前提条件は売り手(売り手株主)が対応すべきことがほとんどで、買い手に前提条件が付与されることはほぼありません。