編集長です。先日、大型自動車運転免許・大型2種自動車運転免許にAT限定導入を検討と言うニュースが入ってきました。その件について書いていきます。
平成3年(1991年)AT限定免許新設
AT(オートマ)限定免許が新設されたのは平成3年(1991年)です。それ以前は全員MT(マニュアル)が運転できる免許です。
平成19年(2007年)以前の運転免許制度
全日本トラック協会さんが作成したわかりやすい資料がありましたのでそれを基に書きます。平成19年(2007年)の6月1日までは、普通免許と大型免許だけでした。
区分 | 普通免許 | 大型免許 | |
自動車の種類 | 普通車 | 大型車 | (特に大きな車両) |
車両総重量 | 8t未満 | 8t以上11t未満 | 11t以上 |
最大積載量 | 5t未満 | 5t以上6.5t未満 | 6.5t以上 |
受験資格 | 18歳以上 | 20歳以上、経験2年以上 | 21歳以上、経験3年以上 |
当時、車両総重量5t以上の死亡事故件数が多いことから中型免許の区分ができたそうです。
平成19年(2007年)中型免許新設
区分 | 普通免許 | 中型免許 | 大型免許 |
自動車の種類 | 普通車 | 中型自動車 | 大型自動車 |
車両総重量 | 5t未満 | 5t以上11t未満 | 11t以上 |
最大積載量 | 3t未満 | 3t以上6.5t未満 | 6.5t以上 |
受験資格 | 18歳以上 | 20歳以上、経験2年以上 | 21歳以上、経験3年以上 |
この際に、それまでに普通免許を持っていた人は自動的に中型免許(8t)限定になりました。しかし、あらたに中型免許を取得する方は11t未満まで乗ることができるという上限が違う中型免許ができてしまいます。
そして、この時に建設業でよく使う2tダンプがメーカーや車の仕様によって4950kgだったり5050kgという「最近普通免許を取った子が運転できるダンプと運転できないダンプがある」ということが問題になりました。運転していいかどうかは車検証の車両総重量を見ないと分からないという状況でレンタルで借りてくる際には要注意でした。
しかし、またドライバー不足で準中型免許が新設され18歳から取得できるようになります。
平成29年(2017年)準中型免許新設
区分 | 普通免許 | 準中型免許 | 中型免許 | 大型免許 |
自動車の種類 | 普通車 | 中型自動車 | 大型自動車 | |
車両総重量 | 3.5t未満 | 3.5t以上7.5t未満 | 7.5t以上11t未満 | 11t以上 |
最大積載量 | 2t未満 | 2t以上4.5t未満 | 4.5t以上6.5t未満 | 6.5t以上 |
受験資格 | 18歳以上 | 18歳以上 | 20歳以上、経験2年以上 | 21歳以上、経験3年以上 |
準中型免許が18歳から取れるようになり問題解決かと思いきや色々と不都合があります。
前回は普通免許が中型(8t)限定に自動で切り替わりましたが、今回は普通免許が準中型(5t)限定に切り替わりました。そのため、準中型でも5t制限の人と7.5t制限の2種類ができてしまいました。
積載量は2tしかなく車両総重量5t未満のトラックでも1ナンバーの中型車扱いだと高速道路のゲートで【中型車】と表示され、準中型の免許を持っている子は「自分はこのトラックを運転していいのだろうか?」となります。ただ単に、高速道路の料金設定で準中型車がないだけではありますが・・・
若い人はどの免許を持っているのか?
では、新しく運転免許を取る際にどの免許を選ぶ人が多いのかを【運転免許統計令和4年度版】という資料が警察庁交通局運転免許課から公表されていましたので、見ていきます。2種免許と特殊免許は割愛します。
20歳~24歳を見ます。
大型 32,910人 中型44,551人 準中型404,776人 普通4,096,612人 です。
残念ながらこの資料には男女別の統計がありませんでしたが、準中型は普通の1/10だとわかりました。
次に令和4年に新規に交付された運転免許を見ます(全年齢)。
大型 58,131人 中型45,676人 準中型19,945人 普通89,909人 です。
大型が多いのは業務上必要でアップグレードされた方が多く含まれると思われます。
令和4年に新規に交付された運転免許を男女別に分けてみます。上段が男性。下段が女性です(全年齢)。
大型 54,788人 中型43,355人 準中型18,624人 普通65,217人
大型 3,343人 中型 2,321人 準中型1,321人 普通24,692人 です。女性の約77.9%は普通免許です。
AT限定はどれほどいるのか?
限定条件が記載された免許を持っている人の統計です。
中型(8t) 60,553,910人 準中型(5t) 11,118,705人
AT限定で中型 7,141,556人 AT限定で準中型 6,011,081人 AT限定で普通 4,474,106人
AT限定の総数は、17,819,593人です。4輪の運転免許取得者実数が80,835,318人なのでAT限定の方は、約22%です。が、冒頭で書いたようにAT限定免許は1991年からの制度(33年前)なので18歳で多くの方が免許を取ると仮定すると51歳以上の方はほぼMTが運転できる免許を持っていることになります。
今、AT限定で免許を取っている人はどれほど?
令和4年中の運転免許試験合格者の表で合格者の数字を拾ってみます。第2種や特殊は割愛します。そして、免許失効と外国免許切り替えも割愛します。
大型 58,991人 AT限定なし
中型 45,021人 AT限定なし
準中型 33,385人 AT限定なし
普通 1,108,210人 うちAT限定815,136人
普通免許のAT率は約73.5%のようです。大型・中型・準中型も含めたAT限定率は約65.4%のようです。
大型免許AT限定ができると・・・
新規の免許取得の普通免許AT限定の母数が圧倒的に多いこと、MTが運転できる昔からの免許所持者でもAT車しか乗ったことがない人が多いことを踏まえると大型免許AT限定がドライバー不足に効力を発生する可能性はありますが、声を大にして言いたい。
「限定を解除するために教習所に通って時間とお金を消費するその労力や企業の負担を何とかしてくれ!」と。それから、「大型や中型の教習が受けられる教習所の整備を支援してくれ!」と。
私たち建設業でも、MT免許がないので解除をしてもらう。中型免許がないので解除をしてもらう。そういう手間暇、費用をかける必要があります。運転免許グレードアップ助成金をどどーんと打ち出しては貰えないでしょうか?相当な賛同の声が上がりますよ。ただ、教習所パンクしますが。