M&Aの手数料に関する話　株価レーマンと移動総資産レーマン

誰に手数料を支払うのか

　M&Aの専門業者には大きく２つのパターンがあります。仲介とFA（ファイナンシャル・アドバイザー）です。

　仲介を利用する場合は、売り手・買い手ともに同じ仲介会社に手数料を支払います（上図）。

　FAを利用する場合は、自社サイド（買い手もしくは売り手）のFAに手数料を支払います。

　仲介とFAの違い、どっちがいいの？という話はまた別の機会に話できればと思います。中小企業M&Aでは仲介を利用するケースの方が多いです（多いから良い！ということではないです。）。

手数料の種類

　M&Aの手数料は様々な種類があります。M&A専門業者によって必要となる手数料が異なる場合もあるので、しっかり確認することが重要です。以下、一般的な手数料の一覧です。

手数料名	支払者	支払先	内容
着手金	売り手・買い手	仲介・FA	本格的な業務の依頼
中間報酬	売り手・買い手	仲介・FA	基本合意契約時に支払い （買い手のみ場合が多い）
DD費用	買い手	DD業者	買い手による売り手の財務・法務・労務・ビジネスなどの調査費用
弁護士費用	売り手・買い手	弁護士	最終契約書のリーガルチェック
成功報酬	売り手・買い手	仲介・FA	最終契約時に支払い

　M&A専門業者によって必要となる手数料は異なります。①～⑤すべて必要という専門業者もいますし、③～⑤だけという専門業者も存在します。

　これはある会社から聞いた話ですが、手数料の説明をろくにせずにアドバイザリー契約を締結させ、「契約に記載あります。」と中間報酬を請求してくるM&A専門業者も事実あるようです（これは契約書の内容を読み込んでいないその会社にも落ち度はありますが、、、）しつこいですが、必ず事前にしっかりと確認しましょう。

　④DD費用と⑤弁護士費用について少しだけ補足しますが、この２つはM&A専門業者に支払うのでなく、弁護士や税理士、公認会計士などの専門家に支払います。企業によっては顧問弁護士や社内法務部などで対応する場合もあるでしょう。

手数料の金額

　それぞれの手数料の金額はアドバイザリー契約に規定されています。アドバイザリー契約を契約する際は、手数料の規定についてしっかり確認する必要があります。

　ここでひとつ注意しておきたいのが、着手金などはアドバイザリー契約を契約する時点で手数料の実額が決まっていますが、成功報酬は多くの場合、「レーマン方式」と呼ばれる算出方法で算出され、最終株価によって変動するため、アドバイザリー契約を契約するタイミングでは手数料の実額が確定しません。ですので、成功報酬の算出方法は必ず確認しておく必要があります。

成功報酬の算出方法

　成功報酬は「レーマン方式」と呼ばれる算出方法を利用するケースが多いです。

算出のベースとなる金額	料率
5億円以下の部分	5％
5億円超 10億円以下の部分	4％
10億円超 50億円以下の部分	3％
50億円超 100億円以下の部分	2％
100億円超の部分	1％

　わかりにくいので数字を用いて説明します。　

例えば、「算出のベースとなる金額」が７億円の場合、以下のように計算します。
5億円以下の部分：5億円×5％＝25百万円…①
5億円超 10億円以下の部分：（7億円‐5億円）×4％＝8百万円…②
①＋②＝25百万円＋8百万円＝33百万円

さらに、「算出のベースとなる金額」の規定がM&A専門業者によって異なるので、ここは要注意です。「算出のベースとなる金額」は「株価レーマン」と「移動総資産レーマン」の二つが代表例です。以下、この二つの場合で実際に手数料を計算してみます。

株価レーマンの場合

「株価」をベースにします。
算出のベースとなる金額＝純資産＋のれん＝4億円＋5億円＝9億円
（5億円×5％）＋（4億円×4％）＝41百万円

移動総資産レーマンの場合

「総資産」をベースにします。
算出のベースとなる金額＝負債＋純資産＋のれん＝6億円＋4億円＋5億円＝15億円
（5億円×5％）＋（5億円×4％）＋（5億円×３％）＝60百万円

　どうでしょうか。株価が9億円の同じ取引であるのに「算出のベースとなる金額」が違うだけで成功報酬が19百万円も違ってくるのです。

　絶対に株価レーマンの方が安くていいですよね。私もそう思いますし、移動総資産レーマンを説明できる気がしません。しかし、移動総資産レーマンを採用している専門業者は存在します。

ですので、株価なのか総資産なのか、何を基準に成功報酬を算出するかは絶対に確認してください！！！