今回も前回に続き、M&Aを中小企業のオーナー経営者の方に正しく理解いただきたいという観点でコラムを書かせていただきます。
オーナー経営者がM&Aを検討する場合、最低限のM&Aに関する知見は絶対に必要
前回のコラムで、「M&Aをしなければ良かった」と感じている中小企業のオーナー経営者が一定数いるという話をさせていただきました。
おそらく、このように感じるオーナー経営者はM&A仲介会社などのM&A業者を介してM&Aを実施している可能性が高いです。M&A業者から営業を受け、その話に乗せられてそのままM&A実行まで進めてしまったということです。
M&A業者はM&Aが成約して対価(成功報酬)を得るというビジネスモデルなので、何とか成約まで導きたいと考えます。したがって、売り手のオーナー経営者が前向きにM&Aを進めてくれるように様々な助言をします。そこで、オーナー経営者にM&Aに関する知見がないと、M&A業者の話を鵜呑みにしてしまい、それが結果として「M&Aをしなければ良かった」という後悔の原因に繋がります。
ですので、M&Aを検討する可能性があるオーナー経営者は最低限のM&Aに関する知見は絶対に必要です。変な話、オーナー経営者がある程度の知見を持っていれば、M&A業者も無理に話を進めることをしにくいはずです。
M&Aの検討は時間がかかる
M&Aが成約するまでにはかなりの時間を費やします。1年以上かかることは至って普通です。
逆に言いますと、満足するM&Aを行うには時間が必要ということです。短期間でM&Aを行おうとすれば、それだけリスクが生じます。また、M&A業者などに依頼をする場合、M&A業者は出来るだけ早く成約まで持っていきたいはずです。やむを得ない事情がない限り、時間をかけて慎重に検討することが満足いくM&Aへの一番の近道です。
オーナー経営者にはM&Aを検討することを是非おすすめしたい
オーナー経営者の方には、是非一度、M&Aについて考えていただきたいです。ここで言いたいのは、あくまで「M&Aの検討、可能性を探る」であって、むやみやたらにM&Aを進めてほしいということではありません。
オーナー経営者の方は、いつかは引退を迎えると思います。その時に会社をどうするのか、まだ先のことなので深く考えていない、あるいは考える時間がないという方が大半だと思います。
ただ、会社の将来の選択肢としては、以下5つしかありません。
➀社内承継(親族内承継含む)
②第三者承継(M&A)
③IPO(新規上場)
④清算
⑤倒産
⑤はあり得ないとして、④も社員の方がいる以上は選択が難しいでしょう。また、③は現実的ではない中小企業が多いはずなので、これも選択肢から外れるとなると、残りは➀か②しかありません。➀をできる候補者がいない場合、②のM&Aしか選択肢がないのです。
こう言ってしまうと消去法のようでネガティブに聞こえるかもしれませんがこれは事実なので、まずはこの認識をしっかり持っていただきたいと思っています。
そして②の選択肢になる場合、より良いM&Aを実施するためには時間が必要になるので、早め早めに準備をすることが必要です。
M&Aは相手が必要な話ですので、自社のタイミングだけ優先もできません。良い巡り合わせを逃さないためにも早めに準備することが大事かなと思います。