福岡です。過去数回に渡りM&Aのプロセスについて説明させていただき、前回はマッチングについてお話させていただきました。今回は、最後の交渉・契約フェーズです。このフェーズは相手先が決まったあと、その相手先と条件交渉し、その内容を契約書に落とし込み、最後に決済、M&A完了という流れです。
基本合意とは
買い手から売り手に提出された意向表明書の内容に基づき、売り手と買い手が合意した基本的内容を契約書の形式にするものが基本合意書です。
基本合意書は”契約書”です。契約書は法的な拘束力が生じるものですが、基本合意書に限って言えば、一部条項(独占交渉権や秘密保持など)には法的拘束力を付与しますが、株価やスキーム内容などには法的拘束力を付与しません。基本合意締結後にデューデリジェンスを行い、デューデリジェンスを実施して最終的な株価やスキームが確定されることになるので、これが法的拘束力を付与しない背景にあります。
一般的には以下内容が盛り込まれることが多いです。
- 重要論点の合意形成(株価やスキーム)
- 今後のスケジュール
- デューデリジェンスの内容
- 独占交渉権の付与
- 秘密保持に関する内容
以上の話だと、一部条項には法的拘束力がなく、条件面も最終確定していない基本合意書をわざわざ締結する必要あるの?そう考える方もいらっしゃると思います。ただ、買い手・売り手双方に基本合意書を締結するメリットがあります!
[買い手のメリット]
なんといっても法的拘束力を持った“独占交渉権”を獲得できることが一番のメリットです。独占交渉権を獲得できれば、一定期間ライバル企業が売り手を交渉することができないので、買収がグッと近づきますし、その安心感を持ってデューデリジェンスを進めることができます。
[売り手のメリット]
意向表明書に記載された内容を契約書という形式で締結できる安心感があります。また、重要論点である株価については意向表明・基本合意のタイミングでは確定していないですが、基本合意書に株価算出のロジックを明記することで、デューデリジェンス後の根拠のない株価減額を防ぐことができます。
デューデリジェンスとは
デューデリジェンスとは、買い手企業が実施する売り手企業の調査のことを言います。デューデリジェンスの項目としては、財務、法務、労務、ビジネスなど多岐に渡り、買い手企業が売り手企業の規模や特徴を加味し、必要な範囲を決定します。売り手が中小企業の場合、財務税務のみという場合もあります(ビジネスはそれまでの面談で確認)。
売り手企業としては基本的には受け身で、買い手企業の依頼に対応する形です。ただ、数百問の質問がきたり、膨大な資料を用意する必要があったりと、負担は想像以上だと思います。また、当たり前ですが質問などには正確に真実を回答しましょう。仮に事実を異なった回答をしてしまい、それによって買い手が不利益を被ると損害賠償請求に繋がる可能性もあります。
デューデリジェンスと言うと「監査」や「検査」といったメガティブなイメージを連想する方もいらっしゃると思います。確かにデューデリジェンスで重大な事象が見つかり、M&Aを見送ることもゼロではありません(これは極端な例ですが、運営する事業は許認可が必要だが、許認可が有効に取得されていないことが判明した場合などはさすがにM&A実行は難しいですね、、)。ただ、買い手の一番の目的は「今後仲間になる売り手企業の理解を深める」ことです!売り手企業としても相手に自社を知ってもらう場と考え、少しでもポジティブに対応いただけるといいと思います。
条件調整、最終契約、決済については、次回ご説明させていただきます。