福岡です。最近、着手金無料のM&A仲介会社が増えています。
中小企業の社長の中には「無料だし、どんなものかちょっとだけ頼んでみようか」と考える方もいらっしゃると思います。
ただ、その際は必ずアドバイザリー契約の内容をしっかりチェックしてください!
譲渡企業の不利益となったり、トラブルに発展するような事も起きています。
今回はその点について少し解説させていただきます。
報酬体系よりも重要な「専任契約」と「テール条項」
トラブルとなりやすいのが、「専任契約」と「テール条項」の2つです。
報酬体系に目が行きがちですが、上記2つの条項は成約する・しないに関わらず今後の譲渡企業(売り手企業)の動きに制限をかける条項なので特に要注意です。
「専任契約」とは
「専任契約」とは、アドバイザリー契約を締結したM&A仲介会社以外のM&A専門家と同様のアドバイザリー契約を締結することを禁止することを言います。不動産業界などでもよく目にすると思います。
専任契約のリスクは、もしアドバイザリー契約を締結したM&A仲介会社が満足に活動してくれない場合、他のM&A仲介会社等に依頼することできない点です。
M&A仲介会社の立場で言えば、専任契約を結ぶことができた場合、その譲渡企業は他社に依頼することができないためM&A仲介会社のペースで活動でき、動きが遅かったり、満足に活動してくれない場合さえ可能性としてはあり得ます。
「テール条項」とは
「テール条項」とは、アドバイザリー契約の期間終了後もM&A仲介会社が手数料を取得できる契約を言います。
もう少しわかりやすく言いますと、アドバイザリー契約の期間終了後にM&A仲介会社が紹介した買い手と将来的にM&Aが成立した場合でも、M&A仲介会社に手数料を支払うという内容です。
ぱっと聞くと、M&A仲介会社が買い手を紹介し、過去に色々と動いてくれたのは確かなので、少しくらい手数料を支払うのは仕方がないのでは?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
確かに、本当にそのM&A仲介会社が真摯に活動してくれていたのであればそうだと思います。
しかし、例えばM&A仲介会社が不特定多数の会社に一方的にDMを送っただけで、それをもって「当社から提案しています」と言われた場合は堪ったものではないですよね。
実際にこのような事例もあるようです。
また、あまりに長いテール条項も要注意です。
当初、買い手企業と売り手企業が知り合ったきっかけはM&A仲介会社の紹介で、そのタイミングでは縁がありませんでしたが、数年後に互いを経営状況等も変化し、M&A成約に至ることも可能性としてはあると思います。
仮に10年後のM&A成約となると、買い手企業と売り手企業が仕切り直しで一から交渉を開始したようなものですので、M&A仲介会社の対価性は低いと考えるのが自然だと思います。
中小企業庁は、テール条項は最低でも2~3年を目安にするよう提言しています。
(テール条項が設定されるそもそもの背景は、M&A仲介会社の紹介で知り合った売り手企業と買い手企業が、M&A仲介会社への手数料支払を回避するため、売り手企業と買い手企業で直接交渉するのを防ぐことを目的としています。)
アドバイザリー契約締結時、「専任契約」と「テール条項」は必ず確認しましょう
アドバイザリー契約の内容は、わかりにくく記載している場合もあります。
ですので、必ず口頭で「専任契約とテール条項はどうなっていますか?」と確認しましょう。
M&A仲介会社としても、専任契約やテール条項といったワードが出てくると、「この社長は知識ありそうだから、下手な説明はできないな」と恐らく考えるはずです!