福岡です。本日は、先日ある社長を面談した際に「特許権を評価して、株価を高くして欲しい」という話があり、それに関連した内容をお話させていただきます。
なお、特許権にも評価手法はありますが、今回は詳細な評価手法には触れず、一般的な買い手の考え方に焦点を当てたいと思います。
「この特許は非常に優れているから、評価してほしい」
先日ある社長(A社長)と面談した際、「この特許は非常に優れているから、評価してほしい」と話がありました。A社長は自社のある事業の売却を検討していますが、売却希望価格の目線が非常に高く、なかなか買い手候補が現れない状況でした。ただ、A社長は上記の通り「特許が非常に優れているから、希望価格は妥当なはず」というご意見でした。
買い手の考え方は 「その資産からキャッシュ(利益)を生むことができるかどうか」
M&Aは買い手がいてはじめて成り立つものです。例えば、売り手社長が「100の価値がある」と考えても、買い手が「50の価値しかない」と考えれば、買い手が100で譲り受けることはなく、M&A取引は成り立たないはずです。
一般的に買い手は、「キャッシュ(利益)を生むことができるかどうか」を最も重要視しています。M&Aの譲受価格は高額ですので、その金額がしっかり回収できるかどうか、そう考えるのは当たり前ですね(売り手の方からすると、「投資」として考えられているようで良い気持ちにならないかもしれませんが、回収を意識することは会社経営についてしっかり考えている買い手だということですので、そのような買い手の方が安心感があると個人的には思います)。
特許権はキャッシュ(利益)を生むことができるか
事例の特許権を評価するには、その特許権がキャッシュ(利益)を生んでいるかどうかが重要で、キャッシュ(利益)を生んでいるのであれば評価の材料になる可能性が高いです。
実際のところは、事例の特許権は事業との関連性がほぼない特許権でして、言い換えると、特許権が無くても事業を継続できるような状況でした。
このような状況の場合、特許権がキャッシュ(利益)を生んでいると言えますでしょうか。特許が無くても事業が継続できるのであれば、特許権がキャッシュ(利益)を生んでいるとは言えないと思います。
ここで事例を一度整理すると、売り手社長は特許権を評価して株価を高くしてほしい、とのご要望でしたが、それはなかなか難しいというのがひとつの回答です。売り手社長の気持ちとしては、長い期間研究開発を行ってやっと特許取得までたどり着いたのだから、それを評価してほしい、これから事業発展も可能性がある、などがあると思います。
ただ、現時点の状況で「評価してほしい」というのは中々難しいかもしれません。買い手の立場で考えますと、特許権はキャッシュ(利益)を生まないので評価できない、また、特許権には関心がないなどが想定できます(例として適切ではないかもしれませんが、絵画に関心ない方に絵画を高い価格で買って欲しいとお願いしてもおそらく買ってくれませんよね。)。
そうであれば、その特許を活用した事業を検討したり、またはその特許を有効活用できる買い手を探すなどが必要だと思います。M&Aは買い手がいてはじめて成立するものですので、いちど買い手の立場になって物事を考えてみることで、何か気づきがあるかもしれません。