福岡です。本日はM&A実施後の社長や従業員の処遇についてお話したいと思います。
大前提として、リストラはほぼありません!
M&Aと聞くと、「乗っ取り」や「身売り」などネガティブなイメージ方もいらっしゃると思いますが、中小企業M&Aは決してそうではありません。
中小企業M&Aは友好的なM&Aは大半で、リストラ前提ということは基本ありません。もしM&Aの交渉中に買い手がリストラ前提の条件を提示してきたらM&Aに応じなければいい話です。
むしろ、人材獲得をしたいためにM&Aをする買い手企業もあります。運送業のドライバー、建設業の施工管理技士、ITのエンジニア、介護事業の従業員など、特に人材不足が叫ばれている業界では従業員は貴重な存在です。
継続勤務する社長もいます
最近は継続勤務する社長が以前より増えていると感じます。40代50代の若い社長がM&Aをするケースを増えていることも関係しています。
ご存じの通り、「所有」と「経営」は別物です。オーナー企業は所有も経営もオーナー社長が担っていたということで、M&Aで所有を譲渡するという考え方です。上場企業の社長は自社の株式を持っていないですよね(保有していても少数)、それに近い感じでしょうか。
社長が継続勤務するケース
社長が継続勤務する場合、以下のようなケースが多いです。
①大手の傘下に入り、大手のリソースを活用して会社を伸ばしたい
会社を成長させるために企業を譲渡するケースです。30代40代など若い社長に多いです。
②社長継続が条件となる場合
出来れば退任したいが、買い手から数年間の継続勤務を条件とされるケースです。良くも悪くも中小企業は社長の影響が多大ですので、社長が退任することで会社が大きく変わってしまう場合、継続勤務を求められる場合があります。
社長が退任するケース
社長が退任するケースとしては圧倒的に事業承継が多く、社長の年代は60代70代が多いです。
ただ、退任すると言っても引継ぎ期間は必要です。株式譲渡して社長という役職を譲ることは多いですが、例えば顧問に就任して数か月間で引継ぎを行います。引継ぎ完了後、完全に退任となることが多いです。
社員の処遇
基本的には社員の処遇は継続されることがほとんどです。非常に重要な話ですので、株式譲渡契約書でも「社員の処遇が悪化しない」旨を規定します。給料が減らないことだけでなく、現状より長時間勤務にならないこともしっかり手当します。
ただ、処遇が悪化しないことを約束する期間は1年から数年となること多いです。言い換えると、株式を譲渡してオーナーが変わってすぐのリストラはほとんどないですが、その後の勤務状況などを鑑み、それに応じて処遇も検討するということです。
処遇の検討は条件面のプラスの改善もあり得ます。頑張れば評価されて給与が上昇することもあるので、社員のモチベーションアップに繋がることもあります。
事業譲渡の場合は要注意
株式譲渡ではなく、事業のみを譲渡する事業譲渡の場合は、少し株式譲渡と違いがあります。
株式譲渡の場合、会社そのものの譲渡になるので雇用契約や就業規則はそのまま引き継がれます(株式譲渡のタイミングで規程変更する場合を除く)。一方、事業譲渡でその事業に関わっている社員も買い手企業に行く場合は、買い手企業と雇用契約を再度締結することになります(「転籍」の形が多いです)。転籍して再度雇用契約を締結する場合でも基本的には同条件になることが多いですが(そうなるように交渉します)、契約は再度締結することになるので内容確認は絶対に必要です。