「M&A」に対してマイナスイメージを持つ方は多い
みなさんは「M&A」という言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか?
おそらく、良いイメージを持っている方は少数派であって、多くの方は「M&A」=「敵対的買収」・「身売り」などといったネガティブなイメージを持たれていると思います。
日本で報道されるM&Aといえば、有名なところですと2005年のライブドアによるニッポン放送の買収劇、最近でいえば、ニトリによる島忠の買収やSBIホールディングスによる新生銀行の買収など、世間を騒がせる話が多いですよね。「M&A」に対するイメージが悪くなるのも無理もないと思います。
ただ、日本の中小企業で行われているM&Aは決して「敵対的買収」や「身売り」ではなく、友好的なM&Aがほとんどです。
敵対的買収としてメディアで報道されるM&Aはごく一部の事例です
ニッポン放送や島忠、新生銀行などの事例は日本で行われているM&Aの中のごく一部であって、これらが「M&A」を代表する一般的な事例では決してありません。
ニッポン放送、島忠、新生銀行の共通点は上場企業ということです。上場企業なので株式を証券取引所で自由に売買できる、よって敵対的買収のようなことも可能になります。
一方、未上場企業の場合はどうでしょうか。未上場企業の株式は第三者が自由に売買できません。売買(≒M&Aによる譲渡)は現株主の承諾があって初めて成立します。したがって、未上場企業の場合は敵対的買収は基本的に起こり得ないのです。
M&Aは身売りではない
日本ではM&Aに対する偏見やネガティブなイメージがあるからか、M&Aとセットで「身売り」という言葉をよく耳にします。経営者の中には、M&Aで会社を譲渡することを逃げと考えたり、従業員に申し訳ないと感じる方も多いようです。
一方、会社を上場させること(IPO)についてネガティブなイメージを持つ方は少ないでしょう。上場企業というと「安心感がある・信用力がある」といったプラスのイメージが強いですよね。
上場とは、会社が発行する株式を証券取引所が運営する株式市場にて売買可能にすることで、資金調達手法の多様化などが本来の目的です。
本来の目的は違えど、M&Aも上場も株式を第三者に譲り渡すという行為自体は共通します。M&Aは「身売り」と言われ、上場はプラスイメージというのは少し違和感もあるように感じます。
加えて、上場することで第三者が自由に株式を売買できるようになるため、敵対的買収の対象になる可能性もあります。そう考えると、M&Aで信頼できる企業に譲渡する方が安心感があると考えることもできます。
米国では上場よりM&Aが一般的
経済産業省の「大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書」によれば、2019年の日米におけるM&Aと上場の割合は以下のようになっています。
M&A | 上場 | |
日本 | 32 % | 68 % |
米国 | 91 % | 9 % |
出所:https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/mahoukokusyo.html
米国では上場よりM&Aによる譲渡の割合が圧倒的に多い状況です。日本にいると想像がつかないような割合だと思います。
言い換えれば、米国のスタートアップ企業ではM&Aによる譲渡が一般的で、ネガティブなイメージはほぼなく、むしろポジティブに捉えられる状況なのです。
日本におけるM&Aはまだまだネガティブイメージが先行していますが、少しずつ米国に近づいていくことが想定されます。