福岡です。本日はオーナー社長の方と面談する際によくご質問いただく「当社はいくらで売れますか?」という質問について話をしたいと思います。様々な考え方をされる方がいらっしゃると思いますので、あくまで私の一意見としてご理解いただると幸いです。
企業価値を即答するのは難しい
「企業価値を面談の場で即答することは難しい」というのが、私の考えです。特に、初回面談で「うちの会社いくらで売れますか?」とご質問いただいても、「御社を正確に理解させていただいてからでないとわかりません。」としか言えません。
「専門家なのだからすぐ回答できるだろう。」であったり、「すぐ回答できないというのは何だか信用できない」などと考えられる方もいらっしゃると思います。しかし、会社の価値はそんな簡単に測れるものではないので、私は少なくとも初回面談で企業価値や株価を断言することはしないようにしています。
M&Aにおける企業価値は相手によって大きく見方が変わる
M&Aは相手(買い手企業)が必ずいる話で、基本的には1社の相手(買い手企業)に譲渡することになります。したがって、例えば99社が1億円という評価をしても、1社が2億円という評価をしてくれるのであれば、2億円で譲渡することができます。M&Aではこのようなことが起きる可能性があるので、評価が難しいのです。
M&A仲介会社などの立場で考えると、売り手オーナー社長の期待値は抑えておきたいというのが正直なところだと思います。ですので、上記の例で言えば、「うちはいくらで売れますか?」と聞かれた際に、「御社の価値は1億円くらいが妥当なので、1億円を目指しましょう!」と話をしていきます。これによって、売り手オーナー社長は1億円が目線となってしまい、より良い条件で譲渡できる可能性を閉ざしてしまうのです。
売り手オーナー社長との初回面談のタイミングで、上記の例でいう2億円で譲渡できるかどうかはわかりません。会社の実態を正確に理解し、相乗効果のある相手(買い手企業)がいて初めてその可能性を探ることができます。
「純資産に営業利益の3年分を足した金額です」という回答しか返ってこない
「うちの会社いくらで売れますか?」と質問して返ってくる回答の代表例は「純資産に営業利益の3年分を足した金額です。」という回答だと思います。「EBITDAの●倍」という回答も多いかもしれません。
確かに、世に公開されているM&Aの価格は上記のような金額に近くなっていることが多いかもしれませんが、一方、利益の何十倍で取引されているケースもあります。
正直、純資産に営業利益の3倍を足すことは小学生でもできる足し算ですし、そのようなことをオーナー社長の方々は聞きたいのではないですよね。
このような回答が多くなる要因として、①何かしら回答しないといけないので、ついそのように答えてしまう、②オーナー社長の価格目線を調整したい、のどちらかのような気がします。
先日、あるオーナー社長と面談をさせていただいた際に、「●●社の方がうちの価値は純資産に営業利益の3年分を足した金額だと言ってきたんだけど、本当にそうなの?」と質問いただいたので、今回テーマとさせていただきました。
これは完全に私の偏見もありますが、企業価値や株価の話のときにすぐ「純資産+営業権3年」という方は何だか信用できないです(笑)。逆に「うちの会社はいくらで売れる?」と初回面談で質問することで、M&Aコンサルタントの技量を図ることもできると思いますので、その観点で「当社はいくらで売れますか?」と質問してみるのはいいかもしれません。