福岡です。
今回は前回に引き続き「中小M&Aガイドライン」についてです。
本日は、先月改定(第2版)になった箇所を中心に解説をしていきたいと思います。
中小M&Aガイドライン:https://www.meti.go.jp/press/2023/09/20230922004/20230922004.html
中小M&Aガイドライン改定の背景
中小M&Aガイドラインは2020年3月に作成され、3年半後の2023年9月に改訂(第2版)されました。
改定に至った背景ついては、第2版の冒頭のある記載から読み取ることができます。
以下、第2版「はじめに」の一部引用です。
「後継者不在の中小企業もその対象に含む中小M&Aの市場が急速に拡大し、マッチング支援やM&Aの手続進行に関する総合的な支援を専門に行うM&A専門 業者(主に仲介者・FA)が顕著に増加する中で、特にM&A専門業者に関して、その契約内容や手数料のわかりにくさ、担当者によっては支援の質が十分と言えない場合があるといった声が聞かれるようになった。」(出所:中小 M&A ガイドライン(第2版)9ページ)
上記記載から、質の悪いM&A専門業者(仲介会社等)があまりに多いので、それら業者の対応を改めさせることが趣旨と言えると思います。
合わせて、中小企業に向けては、「質の悪いM&A専門業者も多いので、トラブルには気を付けてください!」という注意喚起の意味合いがあると考えています。
国(中小企業庁)が作成するガイドラインにおいて、民間業者に対してこれほどまでに苦言を呈するのは珍しいことだと思います。
逆に言いますと、質の悪いM&A専門業者が多く存在し、国としても何らかの手を打つ必要があると考えたということでしょう。
まずは、この事実を認識いただくことが重要だと思います。
中小M&Aガイドライン改定の内容
改定内容については➀仲介者・FAの手数料の整理、②支援の質の確保・向上に向けた取組、③仲介契約・FA契約締結前の書面による重要事項の説明、④直接交渉制限に関する条項の留意点、の4点が大きなテーマとなっています。以下で順に見ていきます。
仲介者・FAの手数料の整理
手数料について留意点が明記されているので、手数料に関するトラブルが多いことが想定されます。
今回の改定ではM&A支援機関の最低手数料の分布が新たに記載されていますので、こちらは非常に参考になります。
手数料は「基準となる価額」に何を用いるか(株価に料率を掛けるのか、純資産に料率を掛けるのか等)によって大きく手数料額が変わる可能性がありますが、改訂版にはその点についても明記されています。
支援の質の確保・向上に向けた取組
記載内容の概略は、「M&A専門業者には、依頼者との間の契約上の義務(善管注意 義務・忠実義務)を履行し、職業倫理を遵守することを求める」というものです。
正直、当たり前過ぎる内容です…
改めて明記しないといけないくらいに質の良くないM&A専門業者が存在するということでしょう。
仲介契約・FA契約締結前の書面による重要事項の説明
アドバイザリー契約の説明が不十分である事例が散見されることから、改めて明記されたと想定できます。
アドバイザリー契約はわかりにくい表現が多い、回りくどい言い回しをしているケースも多いので、必ず担当者から口頭説明を受けるようにしましょう。
直接交渉制限に関する条項の留意点
今回の改定では、直接交渉(M&Aの相手方となる候補先と、M&A専門業者を介さずに直接交渉又は接触すること)について以下のように明記されています。
➀M&A専門業者が紹介した候補先のみに限定すべき
②候補先とのM&Aに関する目的で行われる交渉に限定すべき
③仲介契約・FA契約が終了するまでに限定すべき
➀と②について明記の通りで違和感ありませんが、③に関しては少しやりすぎ感を感じます。
③の通り、仲介契約・FA契約が終了するまでに限定すると、(基本ないとは思いますが、)当事者同士がM&A専門業者に手数料を支払いたくないため、仲介契約・FA契約を解約してM&Aを実行するようなこともできてしまいます。個人的には、3か月~半年くらいの期間設定はしてもいいのではと感じます。