福岡です。皆さまは「中小M&Aガイドライン」というものをご存じでしょうか?
一般的には馴染みがないかもしれませんが、中小企業庁が中小企業のM&Aを円滑に進めるために作成したものです。2020年3月に初版が公表され、先月の2023年9月に改訂(第2版)がされました。
ホットなトピックスということで、2回に渡って「中小M&Aガイドライン」について解説したいと思います。
中小M&Aガイドライン:https://www.meti.go.jp/press/2023/09/20230922004/20230922004.html
「中小M&Aガイドライン」とは
2000年代以降、日本では中小企業M&Aが徐々に増えつつありますが、公になっている中小企業M&Aに関する情報は少なく、また、具体的指針のようなものは存在していませんでした。
そこで、2020年3月、中小企業庁が中小企業のM&Aを円滑に進めるためのガイドラインとして「中小M&Aガイドライン」が制定されました。
「中小M&Aガイドライン」制定の意図・背景
中小M&Aガイドラインが制定された理由は、「国が中小企業にもっとM&Aを進めてほしい。」と考えているからだと考えられます。
その背景には、日本の中小企業における「経営者の高齢化」と「後継者不在」があります。
日本経済は優れた技術やノウハウを持つ中小企業によって支えられていますが、その中小企業で後継者不在という理由から廃業が進んだ場合、日本経済にとって大きな打撃となります。また、従業員の方の立場としても、働く場がなくなることは非常事態で、従業員やその家族の生活にも関わる大きな問題です。したがって、国としても、M&Aを活用することで廃業せずに企業が存続できるのであれば、ぜひM&Aを検討してほしい、そのような考えがあるのです。
ただ、M&Aと言われても「よくわからない」、「ハードルが高い」などネガティブなイメージも多いと思います。
そこで、国(中小企業庁)が率先してM&Aの教科書のようなものを作成すれば状況は変わっているのではないか、そのような経緯で作成されたのは「中小M&Aガイドライン」です。
「中小M&Aガイドライン」制定のもうひとつの背景
上記の通り、「中小M&Aガイドライン」は中小企業の皆さまに正しくM&Aを理解してもらうために作成されていますが、それに加えて、「M&Aに関わる事業者の行動規範」という側面もあります。
中小企業M&Aを円滑に進めるためには、そのサポートを行う事業者(M&A仲介会社等)も必要です。
一方、中小企業M&Aに関わる事業者数は近年増加傾向ですが、事業者の中には健全ではないやり方をしている事業者が存在しているのも事実です。
そのような業者に対しては一定のルールを定めて牽制する必要があり、「中小M&Aガイドライン」にはその意味合いもあります。
「中小M&Aガイドライン」の内容
内容としては、中小企業のM&Aについて広く理解できるようなものとなっており、事例やM&Aの進め方、M&A仲介者の選定する際の注意点などが記載させています。
また、2023年9月の改定では以下の内容が大きなテーマとして扱われています。
➀仲介者・FAの手数料の整理
②支援の質の確保・向上に向けた取組
③仲介契約・FA契約締結前の書面による重要事項の説明
④直接交渉制限に関する条項の留意点
改定には、質の悪いM&A業者が増加しているという背景があります。
次回はこの改定内容を中心に見ていきたいと思います。