最近、M&A(買収)を検討されている中小企業の社長の方々と話をする中で、「人手不足」というキーワードを良くお聞きします。M&Aを活用して、人手不足解消を図りたいという戦略です。「事業拡大の絵は描けているけど、人手が足りていなく実現できていない」というような話を本当に良く耳にします。
M&Aによって人手不足は解消できるのか、本日は「M&A」と「人手不足」をキーワードとしてお話したいと思います。
人手不足解消を目的とした買収はなかなか難しい
結論から言いますと、「人手不足」解消を目的としたM&Aは難しい感覚があります。
当たり前ですが、M&Aで会社を譲り受けることでその会社の社員も仲間になります(会社の譲渡(株式譲渡)ではなく、事業譲渡の場合は社員の引き受けがない場合も存在します)。
したがって、M&Aを行った直後は買い手企業グループとしては社員が増加することになります。
しかし、「人手不足」解消の根本的な課題である採用や待遇面の改善とはなっておらず、一時的なものに過ぎないと考えられます。
さらには、会社を譲渡したオーナー社長が退任したタイミングで、「社長が辞めるなら自分も辞める」と考える社員が出てきたりする可能性もあります。
M&Aで会社を買収しても、その会社の社員が100%継続勤務することは保証できないのです(もちろん、絶対に退職されてしまうと困る役員や社員の方については、できる限りM&A実行前に調査し、リスクを軽減します)。
人手不足解消には会社を譲り受けるより、会社を譲渡する方が有効な場合が多い
もし、「人手不足解消」ということだけに的を絞るのであれば、会社を買収するより、会社を譲渡した方がうまくいく可能性が高いと思います。
規模の大きい企業に会社を譲渡することで、その買い手企業から出向等で人のサポートを受けることができる、買い手企業のネームバリューを採用で活用できる、買い手企業の人事・採用部門のサポート受けることができる、など、多くのメリットがあります。
会社を買収して社員を増やすことと比較し、会社を譲り渡す方が根本的な人手不足解消に繋がる可能性が高いと考えられます。
また、既存の社員にとってもメリットがあるかもしれません。例えば、買い手企業の教育リソースの活用、キャリアの選択肢の拡大(買い手企業への派遣など)、福利厚生の充実(買い手企業の福利厚生施設の使用など)などが考えられます。
会社を譲渡(資本提携)することで様々なリソースを得ることができる
本日は「人手不足」をキーワードにしましたが、資本提携をすることで人材以外にも顧客ネットワークや、資金面のサポートなど、様々なメリットが生まれることがあります。
もちろん、会社を譲渡することは良い面ばかりではなく、グループ会社になることで制約ができたり、親会社への決裁が必要になることがあるなど、今までとまったく同じ経営スタイルは難しくなるでしょう。
ただ、自社単独での経営に課題がある場合、M&Aを活用することでその課題を解決できる可能性はあります。一度そういう目線でM&Aについて考えてみるものいいかもしれません。