加齢による変化 酒に弱くなる?

柴山です。若い頃はガンガン飲めたのに、年を重ねるごとにお酒が弱くなった。つい昔のペースで飲んでしまい、翌日は二日酔い・・・。そんな経験をしてしまったことのある人も少なくはないと思います。今回はアルコール消化能力についてお伝えします。

アルコールで酔うとは?

 「酔う」とは血液に溶け込んで脳に運ばれたアルコールによって脳が麻痺してしまうことです。どのくらい酔っているのか、その程度は脳内のアルコール濃度によって決まります。しかし実際には脳内のアルコール濃度は測れないため、血液中のアルコール濃度を測って判定します。

 楽しくお酒が飲めるのは「ほろ酔い期」の段階までです。大脳の働きが抑えられることによって、本能や感情をつかさどる部分の働きが活発になり、解放感を感じられたり、陽気になったりするのです。

 しかし、アルコールの量が増えるに従って酔いが進み、脳の麻痺も進みます。「酩酊(めいてい)初期」「酩酊期」になると知覚や運動能力が鈍り、繰り返し同じ話をしたり、千鳥足になったりします。

 さらに酒が進み、「昏睡期」になると、麻痺は脳全体に及び呼吸困難に陥り、最悪の場合には死に至る危険性もあります。酔いの進み方には個人差があるため、自分にとっての酔いの状態を知っておくことも大切です。

アルコール血中濃度と酔いの状態

なぜ夜アルコールを飲んで朝アルコールが覚めるのか?

 体内に入ったアルコールは20%胃で、80%が小腸で吸収されます。そして血管を通って肝臓に集められ、酵素によって分解されます。

 アルコールはまず①A D H(アルコール脱水素酵素)によってアセトアルデヒドに分解されます。次に②A L D H(アセトアルデヒド脱水素酵素)によって酢酸に分解されます。③酢酸は全身に送られ、筋肉や脂肪組織で二酸化炭素と水に分解され、呼気や尿となって体外へ排出されます。

 ただし、このプロセスは一度で完了するわけではありません。分解しきれなかったアルコールやアセトアルデヒドは心臓を経由して体内を巡り、再び肝臓に戻って分解されるという過程を繰り返します。

 アセトアルデヒドは、毒性が強い物質で、吐き気や頭痛を引き起こします。多量の飲酒によって悪酔いや二日酔いが起こるのは、アセトアルデヒドが体内に長時間溜まっているためです。

加齢で酒が弱くなる理由

 年を取るとなぜ酒に弱くなるのか。原因は大きく2つあります。
 ①肝臓の機能低下によりアルコールの分解が遅くなる
 ②体内の水分量が低下し、血中アルコール濃度が高くなる

加齢でお酒が弱くなる理由①肝臓機能の低下

 1つは加齢によって肝臓の機能が低下し、アルコールを分解するスピードが遅くなるからです。そうすると、同じ量を飲んだとしても、若い頃に比べアルコールの血中濃度が高くなってしまいます。そのため若い頃と同じ量を飲んで、翌朝お酒が残っていると感じてしまうのはそのためです。
 具体的な分解スピードがどの程度低下するかというデータはありませんが、アルコールの分解速度が一番速いのは30代といわれています。その後は徐々に処理能力は落ちていくと考えられます。

加齢でお酒が弱くなる理由②体内の水分量が低下

 2つ目の理由は、体内の水分量の低下です。人間の体内の水分比率は赤ちゃんの頃は80%と非常に高いのですが、成人で60%と加齢とともに水分率は下がっていきます。そして高齢者になると50%台になってしまいます。アルコールを飲むと体内の水分中に溶け込みます。体内の水分量が少なくなると、アルコールを溶かす役割をしてくれる量も減るため、血中のアルコール濃度が高くなりやすいです。

アルコール摂取で水分低下

・アルコールを分解するときにも体内の水分を使用するため、どんどん体内の水分がなくなり血中アルコール濃度が高くなってしまいます。
・アルコールには利尿作用があり尿量が増えます。もともと体内水分量が少ないところに、アルコールを飲むとさらに脱水が進み、血中アルコール濃度がより高くなってしまいます。

アルコール1単位は純アルコールで約20g

・ビール … 500ml(500ml缶1本)
・酎ハイ … 350ml(350ml缶1本アルコール度数7%)
・ワイン … 200ml(グラス2杯)
・日本酒 … 180ml(1合)
・焼酎 … アルコール度数25%のもので110ml(0.6合)
・ウイスキー … 60ml(ダブル1杯)

アルコールの分解にかかる時間の目安

 体質や年齢などに個人差はありますが、1単位のお酒を飲んだ場合にかかるアルコールの分解時間は男性で約2.2時間程度、女性で約3時間程度とされています。例をあげると500mlの缶ビールを3本飲むと男性で6.6時間、女性で9時間です。
 お酒に弱い人や高齢者ではさらに多くの時間がかかります。また、同じ人でも飲酒した日の体調や疲労の程度によって分解速度が異なるとされます。

睡眠中はアルコール分解速度が遅い

 特に睡眠中は、アルコールの分解速度が遅くなります。アルコール分解には時間がかかり、睡眠時には分解速度が遅くなるということは、お酒を飲んですぐ寝てしまったり、遅い時間まで飲むと朝までお酒が残ります。二日酔いで体調不良や出勤時のアルコールチェックでアルコールが検出されます。
 そのため、一晩寝たからといってアルコールの分解が終わっているとは限らないことを忘れないようにして下さいね。

お酒の上手な飲み方

 空腹時にお酒を飲むと、酔いが回るのが早くなるとされます。これは胃の中に食べ物がないとアルコールが直接小腸に流れ込み、吸収速度が速くなってしまうからです。また、お酒を飲む時には次のようなおつまみを一緒に食べるのがオススメです!

タンパク質を含む食品
 アルコールを分解する肝臓の働きや分解酵素を活性化させるには、タンパク質を摂ると良いとされています。
 キムチ・枝豆・チーズ・ビーフジャーキー・魚肉ソーセージなどがあります。

ビタミンBを含む食品
 アルコールを分解する助けになる。
 豚肉・魚・大豆・アーモンドやクルミ、ゴマなどのナッツ類・シード類・玄米や小麦胚芽などの穀物に多く含まれている。

レシチン
 肝臓の細胞活性化と肝機能の保護。
大豆製品や卵黄に多く含まれる。

 食事は胃の中の食べ物が粘膜の上に層を作って、消化管への負担を和らげます。さらにアルコールの吸収を遅らせてくれるほか、お酒のペースを抑えることもでき、飲み過ぎを抑えてくれます。

食事やお水と一緒にお酒を楽しみましょう。